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Uchikawa Walk
シロエビ漁見学ツアー
2020.10.20 up

富山湾は海産物の宝庫です。深い海が海岸近くまで迫る特徴的な地形は、「天然のいけす」とも呼ばれ、豊富な魚種が水揚げされます。なかでも、シロエビの安定した漁が行われるのは、世界中をみても富山湾だけです。

美しく透き通った姿から「富山湾の宝石」とも称されるシロエビ。そのシロエビの漁を漁船から見学できるツアーが、当ホテルからもほど近い、新湊漁港で行われています。今回、そのツアーをスタッフが体験してきました。世界に1つしかない「シロエビ漁見学ツアー」は、シロエビを大切にしたいと想う人々の愛に溢れていました。

シロエビが安定して獲れるのは世界で富山だけ。

引用元:くらし歳時記(http://www.i-nekko.jp/mikaku/2020-051109.html)

ツアーに出かける前に、まずはシロエビの基礎知識から。

シロエビは体長5〜8センチメートルほどで、かすかに桃色がかった透明な体色をしています。味はねっとりとした食感と甘みが特徴で、富山県では生食や昆布締め、かき揚げや空揚げにして食されています。

シロエビは日本の固有種です。海の深いところ(水深100〜300mほど)を好み、富山湾や駿河湾、相模湾や遠州灘など、実は日本全国の水深の深い海に広く分布しています。 

その中でも富山湾は、シロエビの漁獲量が圧倒的に多く、世界で唯一、安定的に漁が行われる漁場とされています。なぜシロエビ漁は富山湾でしか行われていないのでしょうか。理由は、富山湾の海底の地形にあります。

富山湾には、神通川、庄川などの大きな河川が流れ込み、陸から近い海底に急勾配の谷ができます。この谷は深い藍色に見えるため「藍がめ(あいがめ)」と呼ばれ、海の深いところを好むシロエビにとって、格好の生息地になります。

また、シロエビはいたむのが非常に早く、遠い漁場で獲れても、港に持ち帰るまでに時間がかかり、鮮度が落ちてしまいます。一方、富山湾は港からほど近い場所に深い漁場があるため、鮮度を損なわず、短時間で港まで戻れます。富山湾の特徴的な地形がシロエビの安定した漁を可能にしているのですね。

シロエビを守る漁師たち。

新湊漁港では貴重なシロエビ漁を見学できる珍しいツアーがあります。新湊漁協の漁師が設立した団体『富山湾しろえび倶楽部』では、「白えび漁観光船」を運行しており、漁師さんのガイドを受けながら漁の様子を船から見学できます。

公式サイトを見てみると、ツアーの受付開始は朝の4時半。集合時間の早さに少し尻込みします。ですが、普段なら寝ている時間に、起きて海上に出る非日常感には胸が躍ります。

漁師さんたちの世界にお邪魔して、シロエビが獲れる瞬間を目の当たりにしたいという気持ちが勝り、「白えび漁観光船」を予約しました。

ツアー当日。辺りがまだ暗いなか、漁港の駐車場に車を停めると、集合場所の新湊漁港には既に明かりが灯っていました。

受付場所は、漁港内に停泊している「白えび漁観光船」の前です。受付を済ませると、漁師さんから漁に関する説明や危険行為などのレクチャーを陸で受けます。一通りの説明が終わると乗船開始。ほのかに明るんできた海へ出発します。


この日乗っていたお客さんは私たちだけ。箱に板を載せた即席の長椅子に腰掛けます。観光船とは言え、普段は漁をするための船なので、「快適な船旅」という様子ではありません。

ですが、硬い椅子も船の揺れも本物の漁を感じさせ、「今から漁に出るんだ」とわくわくします。漁師さんと交わす会話も、船のエンジン音に負けじと、ひときわ大きな声で繰り広げられます。凪の静かな海とは対照的に、船上はすごく賑やかな空間でした。

漁場に向かう間、漁師さんはシロエビにまつわる様々な話を教えてくれます。シロエビの生態、シロエビ漁のやり方、漁に使う道具など、普段の生活ではなかなか知りえない話が数多く飛び出します。

特に印象的だったのは、シロエビ漁の持続可能性(サスティナビリティ)について。シロエビ漁では漁獲量を厳しく管理し、後世に与える影響を考慮しながら漁を行っているそう。その背景には過去のシロエビの不漁にあります。

従来は多くの白えび漁船が漁に出て、それにより漁獲競争が起こっていました。その結果、1985〜88年に、白えびの漁獲量は500トンから200トンへ減少、その後10年をかけて回復したものの、これを機に、漁師たちは、「白えびを必要以上に獲ってしまっているのではないか」と危機感を抱くようになります。

そこで2003年から、白えびの適切な資源管理のために、県水産研究所と県漁業協同組合連合会が連携して、調査と分析を行い、2008年から漁の回数を制限するようになりました。

その結果、2008年から2009年にかけて一旦漁獲量は減少したものの、2010年に漁獲量が増加しました。2010年は、2008~2009年に比べ、漁の回数が少ないにもかかわらず増加していることから、シロエビ漁の回数制限が、水揚げ量の維持に繋がったと考えられ、今に至るまで漁の回数制限が続けられています。

現在は2つのグループにわけて操業し、全体の水揚げ量を調整しながら漁に携わっています。富山県でしか獲られていない貴重な資源を守り、後世に受け継いでいくための重要な工夫だと漁師さんは言います。

 船上で見た“富山湾の宝石”の姿

漁師さんの話に聞き入っていると、急に船上が騒がしくなってきました。いよいよシロエビ漁が始まったようです。

向かいの船では乗組員が慌ただしく動き、海深くに投下されていた底びき網が引き上げられています。機械で網を巻取り、最後は漁師さんの手で船内に引き入れます。引き上げられた網は獲れたシロエビでパンパンに膨らんでいます。

網の中ではシロエビが跳ねまわっています。シロエビを網からかごに移し、私たちのもとへ持ってきてくれました。


かごの中のシロエビは、地元のスーパーで見かける姿とは全く違いました。少し桃色がかった体は朝日でかすかに光り、網の底が見えるほどに透き通っています。

シロエビは死ぬと体色が白くなるため、透き通った姿は獲れたての瞬間にしか見られないそう。眼前に広がる空と海の青一色の中、透き通った桃色に輝くシロエビは、まさに「富山湾の宝石」にふさわしい姿でした。

「とれたてのシロエビ、食べてみてよ!」

漁師さんの言葉に思わず唾を飲みます。獲れたてのシロエビを生きたままいただきます。

口の中に含んだシロエビは、噛めば噛むほど甘みが溢れます。ほのかに残る海水の塩気もアクセントとして加わり、調理をせずともそのままで極上の味わいです。

さえぎるもののない空と海を眺め、潮風を感じながら船上で獲れたてのシロエビを味わう。世界中のどこを探しても、ここでしか味わえない貴重な体験です。

シロエビに夢中になっていると空はだいぶ明るくなっていました。仕掛けた網を回収し、漁港に戻ります。漁に出ていた船と海鳥が、並んで海を進む様子が印象的でした。


 漁港に到着すると、競りの準備がはじまっていました。獲れたシロエビは編み上げの際に混ざった他の魚と選別されます。選別が終わると、漁港内の一角に競りの開始を待つ人々が集まってきました。シロエビの競りは競り人のひと声からはじまり、淡々と進められていきます。競り落とされたシロエビは、氷水に入れられて運ばれていきました。

日の出前からはじまったシロエビ漁は、競りにあわせて終わり、漁師さんたちは道具の片付けや船の掃除をはじめます。仕事が終わり、和気あいあいと会話をする漁師さんたちを眺めながら、私たちは帰路につきました。

資源保持活動の一環として始まった「白えび漁観光船」のプロジェクト。シロエビの美しさと貴重さを誰よりも知っている、漁師さんたちの目線で漁を見ると、シロエビがいかに地元の人々に大切にされているのか伝わってきます。

また、船上でしか味わえない景色は圧巻です。青い海と空の中、宙に揚がり、太陽に照らされるシロエビの様子は、まさに「富山湾の宝石」でした。

シロエビに対する漁師さんたちの想いと行動が積み重なり、今の私たちの食卓へと繋がっています。富山の特産品を味わうだけでなく、「白えび漁観光船」に乗って、その出発点に触れてみてはいかがでしょうか。

観光船のご予約は、『富山湾しろえび倶楽部』のホームページ、メール、電話、そしてLINEでも可能です。


<シロエビ漁見学ツアーについて>

『富山湾しろえび倶楽部』

観光船予約専用アドレス: yoyaku@shiroebi@shiroebiclub.net
電話予約: 0766-82-7707(9:00〜15:00 月・火・木・金曜日)
ホームページ予約: https://airrsv.net/shiroebiclubyoyaku/calendar

⚠︎予約期間は運航日の60日前より2日前まで
⚠︎ホームページ予約の場合は7日前まで

現地アクセス: 新湊漁業協同組合
〒934-0025 富山県射水市八幡町1丁目1100
https://goo.gl/maps/2qhwyu6UnZbGxz9s8

<記事作成の参考U R L>

北陸物語氷見の民宿 青柳新湊漁業組合富山湾白えび倶楽部Wikipedia[シラエビ]Aquarium Movies archive旅ぐるたびPRIDE FISH居酒屋応援隊

白えびの自主的な資源管理について―資源管理指針の策定― [とやま市漁協岩瀬青年部 網谷繁宣]
富水研だより[富山県農林水産総合技術センター(H22.8)]

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